「星の王子さま」と「イエスさま」の心 (2012年度7月号より) |
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フランスの作家サン・テグジュペリが遺した童話「星の王子さま」は、今では、みなさんが子どもの時に一度は読んだり観たりする名作ですね。挿絵が可愛いらしいので読みやすく見えますが、その深い意味がわかるようになるのは、かなり後になってからかもしれません。なぜって、「子どもだったころの・・・・に」とあるように、作者が、かつては子どもだった大人に読んでほしいと思って書いた、大人のための童話でもあるからです。 私の少年時代には、この作品は日本ではまだあまり知られてなく、初めて読んだのが大学生の時で(読んだというより、第二外国語のフランス語の補講の教科書として接しましたので、作品の内容まではわかりませんでした)、その後年令を重ねるごとに好きになり、今では愛読書の一つです。 貴族の家系に生まれ飛行機の操縦に若い時からなじんだ作者は、最後はフランス空軍の大尉として、第二次世界大戦末期の1944年、任務中に飛行機もろとも地中海に没しました。1943年に出版されたこの作品は作者の遺書だという人もいます。 物語は、サハラ砂漠に不時着して飛行機の修理をしていた作者が、遠い小さな星から降りて来た王子さまと出会い、言葉を交わすところから始まります。そして王子さまの、ほんとうのことしか知りたがらない澄んだ目と純粋な心から、自分と、多くの大人が忘れているたいせつなことを教わるのです。 服装がおかしいからと人を軽蔑する大人、物の価値を数字で言わないと、あるいは、お金に換算しないと信用しない大人、お金をもうけて数えることしか関心のない大人、権力ある地位についていばることがいちばんたいせつな大人、ほめられることがなによりたいせつな大人、お酒を飲んでばかりで、「なぜお酒を飲むの?」ときかれ、ついには「お酒を飲むのが恥ずかしいから飲む」という変な結論になってしまう大人・・・・・王子さまはどの大人とも友だちになれませんでしたが、一匹の野のキツネと友だちになりました。キツネは王子さまにだいじなことを教えてくれました。「たいせつなことはね、目に見えないんだよ、心で見なくちゃね」。 王子さまは故郷の小さな星に、一輪のバラの花を残していました。王子さまはその花に水をかけたり、覆いガラスをかけたり、ケムシをとってやったり、不平や自慢話を聞いてやったり、長く黙っていると静かに聞き耳をたててやったりしたのです。いま王子さまには、その小さな一輪のバラの花が、旅している間に見た多くの美しい花よりずっとたいせつに思えました。 キツネは言いました。「君が君のバラの花をたいせつに思っているのはね、・・・その花のためにひまをつぶしたからだよ、時間を使ったからだよ」。 「めんどうみた相手には、いつまでも責任があるんだ。君は守らなけりゃならないんだ。バラの花との約束をね・・・」。 作者はこの作品で、宗教的価値や信仰のことについては一言もふれていませんが、子どもの心を失わない大人こそほんとの大人であると言いたかった作者の心は、イエスさまの心に通じていると私は思っています。 「子供たちをわたしのところへ来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのような者たちのものである。」 ルカ 18:16 「はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。」 ルカ 18:17 神の愛を受け入れることが出来て、神の愛に包まれていると感じる時、私たちは子どものように素直な心に帰っていますね。 中高科担当 :K.K |
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